僕はどうやら大阪の北西部をぜんぜん知らない。西淀川区とか、たまに湾岸線から見ることがあるくらいで、歩いたことがない。屋上から高いビルが3つ4つ見えるのはホテルだろうか。遠くで電車が走るのを、その音が、後からいちいち追いかけてく。電車はあまり乗らないけど、遠くから眺めるのは目に耳にとても心地がいい。面会に来た友人たちが、僕のお菓子の食べ方をみて「骨溶けるで」と注意する。骨をつけるために入院してるのに、溶かしてしまってはいけない。数日前にお粥じゃなくて普通のごはんにしてくださいと栄養士さんにお願いして、なんとなく忘れられたまま過ぎて、今朝もお粥を食べ、お昼も食べようとしていたところを「ちょっと待って、取り替えてきたるわ」と介護さんにお椀を持ってかれた。しばらく待つと、なんとカレーライスが届いた。まさか、お粥の代わりにカレーライスをもらえるなんて。病院とカレーの組み合わせが自分のなかでフィクションになりすぎて、目の前にあることがナンセンスに感じられた。これまで寝る前に何度妄想したことか。ブラウザのブックマークに「カレー」というフォルダをつくって、この先行く気もないお店の情報を集めたり、面会に来た人にこれを紹介して代わりに行ってもらって、感想を求めたりしていた。食べてる姿を誰にもみられたくなくて、お膳を下げる看護師さんも面会人も来るなとおもいながら食べた。入院食をこんなに味わって食べたことはない。そして、実はカレーよりも衝撃だったのが、白ごはんの存在。自分はお粥が好きな人間で、白ごはんとお粥ならどちらでも大して変わらないとおもっていた。だから、体を起こしてからの変更も、そう強くは主張してこなかった。でも、今日およそ2ヶ月ぶりに白ごはんを食べて、食事におけるそれぞれの役割の違いを痛感した。寝たきりで食べるにお粥は最適だけど、通常の食事は、白ごはんで食べるようにちゃんと考えられている。カレーだけじゃない、夕飯のときもそうで、これまで栄養をとるため、おなかを満たすためとおもって食べていた薄味のおかずや、冷めた汁物が、ちゃんとおいしく感じられる。お粥だと、口の中で薄味のおかずが水分と混ざって一回一回リセットされるので、すっかり味気ないものになってしまっていた。白ごはんとお粥は、それ自体が似ていても、周りがすっかり違うものになってしまうのか。お粥の食事があたりまえになりすぎて、こんな単純なことを今まで考えもしなかった