再入院

病院で診察をうけるやいなや、自分でできる訳ないでしょ、と先生に一蹴された。でも小便をとるために管をとおすのはどうしても嫌だと食い下がって尿瓶にかえてもらった。入院はとりあえず2ヶ月、退院後もしばらく今のお仕事はできないよ、まあ半年は障害あるわ、ここ、ちゃんと治さんかったら、もう最悪やからね、最悪の事態が待ってるから。と、さんざん脅される。いまはまだここ西成でパフォーマンス型の個展「O才」がつづいていて、今日からはじまる週末の3日間は、あらゆる事態に対応できるよう、この個室で過ごすことになった。ネットで中継して、パフォーマンスも、これまでと少し形を変えながら継続する。さっそく西光さんがお見舞いにきてくれた。きのうの出発前に搬送の運転のヘルプを頼みたくて事情を話したので、心配していたらしい。何か必要なものあるか?と聞かれて、まだ何の検討もつかないでいると、看護師さんがアメニティのリストをつくってくれた。コップや歯ブラシに混ざって、おむつ、の文字。まあ、そりゃそうですよね、動けないんだから、と若い看護士さん。男の人で、なぜかほっとした。西光さんは展示を見にいくから、といってお昼に一度出てって、本番が終わったあとの夕方、遠藤くんと2人で差し入れをたくさん抱えて帰ってきた。メリークリスマス!といいながら、お菓子でパンパンに詰まったでかくて赤い長靴を枕元に置いてくれる。いまの季節にこんなものどこで買ったんだろう。O才は口コミがひろまっているらしく、先週くらいから、当日券の問い合わせが多くなった。遠藤くんは、展示の内容に乗れなかったらしい。細かいところも含めて、今回初めて直接きいた批評のことばだった。僕の動作における代役は、本来客としてきてくれる予定だった松見くんが快く引き受けてくれた。さすがの身のこなしで、順応がはやい。でも僕は実際にはその現場にいない。1.4キロメートル離れた病室から、会場の一カ所にむかって、合成される声のテキストをカタカタと書き込んでいる。財布の中に、映画のチケットが二枚入っているのですが、使えません、なぜなら僕は、この1.4キロメートル離れた部屋にあるベッドのうえで、よこになって、うごくことができないからです。夜、西光さんたちは帰り、渡邉くんが隠し撮りした映像をもってきてみせてくれる。内容は毎日かわる。毎日かえてもいる。映像をみながら気になるところがいくつかあったので、それぞれの人に連絡をとりながらの、確認作業。のち、十和田の焼山で撮った映像も一緒にみていたら、僕が墜落したあとでながれた、焼山の町内放送がばっちり収まっていた。ただいま、焼山地区、湯治の宿おいらせ付近にて事故が発生し、救急車、およびパトカーが発動いたしましたが、火事ではございません。その後、遠景に到着する救急車を屋上から抑えるロングショット。さすが、渡邉くん。看護師さんの手を借りながらセッティングを少し試して、明日に備えて寝るようとする。どこかの病室で「おーい!おーい!」と叫びつづける男の声。窓の外では警察ともめる若者たちの怒号。どちらも一晩中つづく。おかげで寝られたもんじゃないけど、ああ、西成に戻ってきたんだなあ、としみじみおもう